
◆くつしたをかくせ! |乙一
くつしたをかくせ!
乙一
光文社 刊
発売日 2003-11-25
『GOTH』などで知られるミステリー作家の乙一が手がけた初の絵本。
透明感のある美しい色合いの絵を担当するのは、「角川スニーカー文庫」の乙一作品の挿絵を担当してきた羽住都。
各ページに英訳を併録。
「サンタがくるぞ! くつしたをかくせ!」クリスマスの夜、大人たちはおびえながら子どもにそう言った。
雪の降る町で、砂漠の国で、南の海で。
子どもたちは決してサンタに見つからないようにと、くつしたを隠した。
犬やラクダに見張ってもらった子もいた。
握り締めて眠った子もいた。
けれど翌朝には、世界中の子どもたちのくつしたにはおくりものが入っていた。
「たいへんだ! サンタがきたぞ!」
彼はだれなのか。
なぜこんなことができるのか。
大人は言う。
「サンタだから、それぐらいできるのだよ」。
あいまいで、不思議だけれど、子どもたちはサンタの存在をそのまま受け入れるしかない。
最後のページで、空を見上げる子どもたちの顔にうかんでいるのは、単なる感謝の気持ちでも、喜びでも、恐怖心でもなく、畏敬の念に近いものだろう。
乙は、これまで幾度となく描かれてきたサンタ像をこわすことなく、けれどまったく新しいサンタのとらえ方を本書で提示してみせた。
乙一ファンのお楽しみ、「あとがき」は今回もたっぷりあって、「ガチャピンとムック」を登場させたりと一見はぐらかすようでいながら、さまざまな示唆を与えてくれる深いエッセイとなっている。
「プロフィール」にも、にやりとさせられる。
(門倉紫麻)
常識とは逆さまな一言が効いた一冊 2005-11-24
夜になると大人たちは、おびえながらこどもたちに言った。
「サンタがくるぞ!」
サンタさんといえば、靴下にプレゼント。
そんな子ども達が喜ぶはずの条件なのに・・・、何故大人たちは「くつしたをかくせ」と子ども達に怯えながら言うのか?
常識とは逆さまな一言から始まるこの絵本。
しかし、ただの言葉遊びに留まらない「サンタがくるぞ!」の言葉。
サンタはどうして怯えの対象なのか?
子ども達がかくしたくつしたの顛末は?
そして、何故サンタは”それ”を為しえたのか?
何故??がつきまとい不思議な雰囲気を醸し出した上に、何やら得体の知れない怖さも加わり、物語は進む。
しかしながら、ラストを飾る空気の中に暖かいもの、未知のものを感じられずにはいられない。
綺麗なイラストとともに、含みのある、どこか空恐ろしくも暖かさを見つけずにはいられないストーリーをどうぞ。
乙一氏ファンならずとも、是非ご一読下さいと薦めてみたい感じです。


