
◆サンタのおばさん |東野 圭吾 /杉田 比呂美
サンタのおばさん
東野 圭吾 /杉田 比呂美
文藝春秋 刊
発売日 2001-11
今年もイヴが近づき、恒例のサンタクロースの集会が開かれる。
新しく加わった女性サンタを認めるかどうかで会は大騒ぎになるが…。
おかしくて、ちょっぴり切ないクリスマス・ストーリー。
100年以上前の話であるがかつて「サンタクロースって本当にいるんでしょうか?」という趣旨の手紙が、バージニア・オハンロンという当時8つの少女から米ニューヨーク・サン新聞に届き、フランシス・P・チャーチという記者がそれに答えて書いた「社説」(1897年9月21日掲載)が大反響を呼んだ。
日本では『サンタクロースっているんでしょうか?』(偕成社)という本になりこれも評判になった。
その本が“大人にも読んでほしい子供向けの本”とすれば、『サンタのおばさん』は“子供にも読んでほしい大人向けの本”である。
今年もクリスマスイブが近づいて、恒例のサンタクロース会議が開かれたが、今年は会長勇退の年であり、副会長が新会長に選任され、会長が担当していたアメリカ支部の後任が紹介された。
新たに加わることになったサンタは女性。
女性サンタを認めるかどうかで、会議は大騒ぎになる――というストーリーだ。
2002年のキーワードは「リセット」だと考えている。
2001年の延長は何もない。
米国同時テロは世界中の人に「何が起きても不思議はない」とマインドセットすると同時に、あらゆる価値観を一変させた。
この本が示唆するように、きれいごとを言ってもこの地球上には性差別は厳然と存在する。
政界・財界・官界・教育界で優秀な女性がチカラを発揮しようとしても、「ガラスの天井」が様々なところに存在することに彼女たちは気づいている。
「女性の暮らし快適に」を標榜してユニ・チャームを創業してから、薄型生理用ナプキンを初めて世に出し、(大げさとのお叱りを受けそうだが)高度成長時代に女性の職場への進出を促したのが40年前。
20年前には世界初のパンツ型紙おむつを発売して、長時間の家事から解放してショッピングや旅行市場の活性化にも少なからず寄与したと、自負している。
そして今、「女性がサンタになる」という既成概念をリセットした発想と、その実現が必要なのである。
リセットは構造改革の必要条件でもある。
女性サンタを誕生させてしまうことが改革の第一歩である。
例えばアートコーポレーション社長の寺田千代乃さんが、新任のサンタになったら、きっとプレゼントの中身やサンタの仕事のやり方さえも変えてしまうであろうし、サンタクロース会議も随分活気づき斬新なアイデアも出ることであろう。
シニカルな議論も噴出するが、ほっとする結末に諸兄諸姉にはおかしくもほろ苦いお伽話として読んでほしい。
もうすぐクリスマス。
続きを書いてみたくなる本である。
東野圭吾氏らしいショートストーリー 2006-12-29
名前のごとくクリスマスのお話です。絵本というよりは、大人向けのショートストーリー。
サンタ協会に各国のサンタが集まって決めることって?本には書かれていないのに、読んだ後にクリスマス以外のサンタの日常を想像してしまう、心温まるお話です。
ちょっと星新一を思わせる、でも日本の現代っ子事情やサンタへの夢をちょっとブラックに差し込むあたり、東野圭吾氏の面白さを感じられる一冊でした。
差別や父性・母性の役割に対する考えが、サンタとクリスマスというテーマでやわらかく上手く表現されているので、クリスマスの童話として子供に読んであげるにも良いと思います。


