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2005年11月06日 特集:働く女性のための漢方セミナー 体調リズム整え、元気なわたし実現(その1)

特集:働く女性のための漢方セミナー 体調リズム整え、元気なわたし実現(その1) 【MSN-Mainichi INTERACTIVE】

 「働く女性のための漢方セミナー」(毎日新聞社主催、日本医師会、大阪府医師会後援、株式会社ツムラ協賛)が9月中旬、大阪市北区中之島1の同市中央公会堂で開かれました。5回目を迎えた今年のテーマは「オンナの強い味方−漢方−」。原因がはっきりしないけれども、日々の生活に影響を及ぼす月経困難症など女性特有の疾患には、漢方がよく効きます。「漢方で理想の私探し」と題したパネルディスカッションでは、漢方治療では特に大切な医師とのコミュニケーションのあり方のヒントをパネリストがいくつも紹介しました。(敬称略)

 ◆パネルディスカッション

 ◇「証」に合わせ処方

 木場 働く女性の皆さんは、原因が分からないけれども「なんとなくだるい」「頭が痛い」と思ったり、調子が悪くて病院に行っても「どこもおかしいところないですよ」と言われたりした経験はないでしょうか。愛さんはどうですか。

 飯島 基本的にだるいですし、やる気がないけど(笑)。

 木場 やる気がない……。

 飯島 本当なの。あと、平熱が低いんです。だから、私はすごく熱があって死にそうなんだけど、38度を超えないと病院に行ってもあまり心配してもらえない。原因が分からないと、「ストレスですね」という一言で片付けられてしまいます。

 木場 それも困りますよね。

 小村 愛さんのような方、私のクリニックでも多いです。血液検査をしても何も異常がない。どこも悪くはないけれども、毎日の生活で体調が優れずお困りなんです。

 飯島 中学や高校の時のように、早起きして、シャンプーして楽しく出かけられる元気があったらいいなと思うときはあるんですが。

 小村 そうした、どこが悪いのか何が原因か分からない症状には、漢方がとても合うのではないかと思います。

 木場 漢方薬を処方する場合、特定の病名ではなくて、「証」というものに対応したお薬がでるわけですよね。

 山田 そうです。でも、証は治療している途中で変わっていくこともよくあります。

 飯島 体の調子は、生理のときとか、生理前で違いますね。あと恋をしたら変わります。

 山田 そうですね、すごく大きく。

 飯島 「ヨン様〜」って奥様たちが夢中になっていますよね。私は最初、あれを見て引いていたんですけれど、だんだんかわいいなと思うようになってきたんです。

 山田 楽しいでしょう。そうすると若々しくなるじゃないですか。自分自身が。それは重要なことですよね。

 木場 ところで、愛さんは先ほど楽屋で、十樹子先生にどんな証かを診てもらったのですよね。

 飯島 診断って大変なことだと思っていたら、意外にそうでもなかったんです。

 木場 どんなことをしたのか教えてもらえますか?

 小村 普段は口頭でうかがいますが、今日は特別に事前に問診表をお渡しして、いろいろ質問に答えていただいたんです。その上で、漢方独自の方法で愛さんの証を見ました。やっぱり虚証ですね。おなかに触ったら、冷たいからとカイロを張っていらした。

 飯島 そう、かわいそうでしょう? 内臓が動かなくて、便秘になっちゃって……。胃の調子も悪いんです。

 小村 足もむくんでいますよね。手にも触れてみました。

 木場 それで分かるんですか。

 小村 脈もとりましたね。あまり元気なはっきりした脈ではありませんでした。

 飯島 脈に、元気も不元気もあるの?

 小村 あります。

 飯島 エーッ、どうしよう。

 木場 漢方のお医者さんに診てもらったときに、基本的に先生がすることは何ですか。

 小村 脈をとり、おなかや手足を触ります。舌も診ます。

 木場 意外と簡単なんですね。

 小村 さらに全体の印象、話し方、体形、表情、いろいろなことも診て証を決めていきます。

 木場 愛さんの手を触って、何か感じることがあれば?

 小村 さっきより元気になっています。やっぱりステージに上がると、テンションも高くなるんですよね。突然、証が変わっています。

 山田 同じ1日の中でももちろん変動するし、それから何か生活のパターンが変われば、例えば恋をしても、証は変化します。

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 ◆基調講演

 ◇特長はオーダーメード 体の状態を全体的に診るのが大事−−近畿大学医学部奈良病院皮膚科教授・山田秀和さん

 西洋医学と比べながら、漢方の特長を紹介したいと思います。

 西洋医学では「何という病気ですか」とまず病名を決めることが大事です。病因を特定するために検査をし、例えば「肝機能が悪い」と診断し、お薬を決めます。

 そうした西洋医学(蘭学)が入ってきて、明治時代に日本で漢方医と蘭方医とがせめぎあい、漢方医学が一時低調になりました。しかし、時代が進むに連れ、実は「それだけではどうもうまくいかない」ということが分かってきました。それよりも、体の状態を全体的に診ることが大切ではないか、ということに気づいたのです。

 例えば、ウイルス性肝炎でウイルスをやっつけるには西洋医学の抗ウイルス剤が効果的です。しかし、肝炎になった結果として生じるさまざまな症状を緩和するには、漢方薬が力を発揮します。

 また、近年は性差医療が注目されています。女性は思春期、妊娠・出産、更年期に大きくホルモンバランスが変わり、それが症状となって体に現れます。ですから、女性には女性特有の予防、治療方法が、一方、男性には男性特有の予防、治療方法があるのではないかという考え方です。「女性外来」は各地に広がっていますが、男性にも男性更年期というものはあり、将来は「男性科」という立場から、男性をサポートする動きもでてくると思っています。

 さらに抗加齢医学の取り組みも始まっています。同じ人でも年齢によって、実際にはその時の生体の状態によって、外界に対する反応は異なる。老化を病としてとらえ、神経、内分泌、免疫のバランスをとっていこうというものです。

 つまり西洋医学だけではうまくいかない。性差も考えないといけない。年齢も体の状態と無縁ではない。ところがおもしろいことに、漢方は昔からそうした考え方を取り入れていたわけですね。

 ウイルスが原因の風邪で発熱している時、私たちが子どものころは「鎮痛解熱薬を飲みましょう」と西洋薬を与えられました。しかし、熱は下がるけれども生体防御反応も低くなってしまう。

 最近は「ウイルスに体が反応して、ウイルスをやっつけよう、ウイルスに対する抗体をどんどんつくろうとしているわけだから、それをサポートしたほうがいいのではないか。あまり熱を下げないようにしましょう」といわれるようになってきました。葛根湯(かっこんとう)とか、あるいは麻黄附子細辛湯(まおうぶしさいしんとう)という漢方薬は、逆に体温を上げることによって、そうした生体防御反応を助けるのです。

 では、どのように診断、治療するのでしょうか。

 漢方の大きな特長は、オーダーメード医療、一人ひとりの体質や時々の症状に応じたお薬を使うという点です。風邪一つとっても、一人ひとりで反応が違うから、それに応じた治療をしましょうということです。

 体質を見極める目安の一つが、「証」です。実証はどちらかというと、がっちり型で胃腸が丈夫、疲れにくい、血色良好な方です。虚証はその反対で、やせ型で胃腸が弱く、体力が低下して病気への抵抗力が落ちている状態、「中間証」はその中間に位置する方です。

 また「六病位」というとらえ方もあります。病態は流動的なので、その変化を段階的にとらえようというものです。例えば風邪でも、なんだか変だなという感じがして、次に寒気がしてくる。そして、ガタガタ震え、熱がガーッと上がる。その時に汗をかく。そうした病状の変化に応じて漢方薬を変えていきましょう、という考え方です。

 もうひとつ、漢方で重要なのは、「気・血・水」という概念です。気は元気の気ですよね。血・水は体の構造を健全に保つためのものです。

 私は皮膚科医ですが、最近ストレスが強くかかるとお肌がものすごく乾燥するということが分かってきました。

 女性の方は「〓血(おけつ)」の方が非常に多い。血の滞りです。顔が発作的に赤くなったり、目の周りにくまができるのも〓血の特徴です。

 それぞれの「証」や症状に対応するお薬があり、さらに、脈診や舌診、そのほか幾つもの項目で、お薬がどんどん分かれていきます。だから、同じ年代で似た症状の女性が3人いても、処方されるお薬は3人バラバラかもしれない。西洋薬では病名が決まると薬剤もそれに応じて定まるわけですが、漢方薬は逆に、風邪の時と関節痛の時でお薬が一緒でも何の不思議もない。その点が違いますね。

 漢方の治療の原則は「瀉剤(しゃざい)」、取り去ることと、「補剤」、補うことです。おもしろいのは、この補剤という概念が西洋薬に今までなかったと思われることです。漢方は「過剰だったら取り去って健康な状態に戻しましょう。足らないのだったら足してやりましょう。冷たいんだったら温めましょう。熱かったら冷ましましょう」と。中国には「ものの真ん中がいいんだよ」という中庸の概念がありますが、その流れだと思います。

 そうした「証」などを診るための診断方法は、望診、聞診、問診、切診の「四診」があります。

 望診は、診察室のドアをガラガラッと開けて入ってこられるときに、その患者さんがどういう入り方をするかというのを見ること。しゃべり方、呼吸音、声、おなかの調子はどうか、あるいは体臭とか、息、皮膚の状態をみるのは聞診です。問診というのは「汗かきますか。口の中が渇きますか。めまいがしますか」などと聞くこと。そして、脈に触れる脈診、腹診などの切診も、非常に重要視されています。

 今日は、漢方の特長を紹介しましたが、私は西洋医学を否定しているわけではありません。私たちは西洋医学的な観点から診察にあたることが多いのが実情です。ですから、漢方を試してみたい時には、病院で「漢方的な治療をしたいのですが」とお話しください。その場合は「別の日に来ませんか。ゆったりした時間をとりますから」と患者さんに話し、別の日におなかや脈を触ったり、問診などでじっくり診断するようにしています。

 これからは漢方のよさを知った上で西洋医学と漢方を上手に取り入れ、皆さんには生き生きと暮らしていただきたいと思っています。

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 ■人物略歴

 ◇やまだ・ひでかず

 近畿大学医学部卒。医学博士。ウィーン大皮膚科客員教授、近畿大奈良病院皮膚科助教授を経て、05年4月より現職。日本皮膚科学会専門医、日本アレルギー学会専門医、日本東洋医学会専門医、日本抗加齢医学会専門医。

毎日新聞 2005年11月6日 東京朝刊





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